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かくれ難問題(3)

                    (拙書より)

待ち合わせにはもっと都合がよい。雨も暑さも寒さも完全に凌げる。相手が遅

れてもその間に会った誰かとしゃべって、退屈もしない。文字通り「コンビニエン

ス」だ。店にとってはささやかな売上げ増より迷惑度のほうが勝っていそうな気

もするけれど。

「やっぱ、あっちにしようって。俺、学校だけで、かんべんしてよって感じ」

玄関から原田君の声がした。その後ろから村井君が「でもさ、5分は損だって。

あんな遠回り」そう言いながら、私と目が合うとお辞儀だけで、いつもの席に二

人で並んだ。原田君のほうは、挨拶どころではなさそうな深刻な顔をしている。

「うーん、だってよう、ここんとこもう三回じゃん『原田君、こんばんは』。ヤベー、

オカマ」

原田君は体をくねらせてから、手で払い退ける仕草をして顔をしかめた。

「学校でシカトされるから来るんだよ。『原田君お友達になってくれたはずよね』

とか」

村井君も身をくねらせて、声色を変えた。

「やーめろよ、気持ちワリー。俺、修学旅行辞めよかなぁ。あんなのと三日もいた

ら飯食えねえ。ああ、ヤベー」

原田君は両手で頭を抱えると机にうつ伏した。「どうしたの?」という顔を向けると、

村井君は原田君の肩に腕をまわして、気の毒でも笑いは勝手に漏れるんだという

くすぐったそうな表情で「センセこいつ、悩んでる」と言う。言葉の端ばしからおよそ

の見当はついた。気色悪い雰囲気の子が、いつもの待ち合わせ場所に現れて、

親しげに声をかけてくるから店を変えようとのことらしい。それまで一度も話題にな

ったことのない子の話なので、近付いている修学旅行と関係ありそうに思える。

「本当にオカマなの?」と私なりの思いもあって尋ねた。「性同一性障害」と呼ばれ

始めた不幸な事情の人々に、痛ましさを感じていた折だったので、そうでなくても物

思いの多い中学生ならどんなに辛いかと、知らない子のことでもつい踏み込んだ。

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